予防の常識・非常識
「歯を失う怖い病気」というイメージが強い歯周病。ですが、テレビのCMなどで見られるように、短期間で歯がグラグラになって抜け落ちてしまうことはふつうはありません。統計的には、歯周病になりにくい人が1割で、残りの8割の人はゆっくり進行していきます。
歯周病を予防するには、セルフケアだけでなく、歯周病の早期発見が重要です。早く異常がわかれば、その分早く手が打てます。そのためには、定期的に歯科医院で検診を受けることが大切。もし歯周病になっていて治療を受けたのなら、治療が終わった時が歯を守る新たなスタート地点です。再発を予防するために検診に通いましょう。
もう少し歯周病に関してお話をさせてください。歯周病のリスク因子の1つに喫煙があることは皆さんもよくお知りかと思います。タバコは歯周病の進行を速めます。約4800人の初診患者さんの喫煙状況と歯周病の進行度を比較したところ、中等度・重度歯周病のかたの割合が、30代の喫煙患者さんと、40代の非喫煙患者さんでは同じくらいとなりました。40代の喫煙患者さんと50代の非喫煙患者さん、50代の喫煙患者さんと60代の非喫煙患者さんも同じような割合でした。
つまり、「タバコを吸っている人は、吸わない人より10年歯周病の進行が速くなる」と言えます。歯周病を予防するために、タバコはきっぱりやめましょう(新型タバコも同じです)。
ところで、皆様にお聞きしたいのですが、歯周ポケットは歯ブラシだけで磨けるでしょうか。歯ぐきの溝の中はプラーク(細菌のかたまり)がたまりやすい場所で、溜まったプラークは歯周病の原因になります。そのため、この部分を歯ブラシで注意して磨いている方も多いことでしょう。
実は、歯ブラシでは溝の中のプラークは完全には取り切れません。しかも、無理に溝の中にブラシの毛先を入れてみがくことを続けると、歯ぐきが傷つきやせ、むし歯になりやすい歯の根面が露出してしまいます。歯ぐきを傷つけずにきれいにプラークを取り除くみがき方は、歯科医院で教えてもらいましょう。歯ぐきの深い溝や歯周ポケットの中の掃除も歯科医院におまかせください。
歯と歯の間をデンタルフロスや歯間ブラシでみがくことと、むし歯予防のためにフッ素入り歯みがき剤を使うこともお忘れなく。
最後に、甘いものを控えているはずなのに、むし歯になってしまう。それは甘いものの「食べ方」に問題があるのかもしれません。
飲食後、お口の中では、細菌の生み出す酸や飲食物の酸により歯の成分が溶け出し(脱灰)、その後、時間をかけて唾液が成分を歯に戻していきます(再石灰化)。溶かす力が戻す力を上回る状態が長期間続くと、むし歯になります。
このとき、甘いものの「量」以上に、食べる「頻度や時間」が問題となります。ひっきりなしに甘いものが口の中にあると、唾液が歯を修復する時間が取れません。ですから、のど飴を絶えず舐めていたり、ドリンクをチビチビ飲んでいたりすると、むし歯になりやすいのです。野菜ジュースやスポーツドリンクなど、ヘルシーなイメージのものにも意外に砂糖は入っていますのでご注意を。
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|Posted 2018.9.10|