口腔がんの豆知識
昨今メディア放送をきっかけに、口腔がんというものが広く知られるようになりました。なかなか治らない口内炎が不安になり、歯科を受診されている方が増えている一方、がんになるなんてめったにない、と他人事と思っている方も少なくないようですが、今一度口腔がんがどんなものなのか、見ていこうと思います。
口腔がんとは、お口の中にできるがんの総称で、舌、歯ぐき、頬の粘膜、顎の骨、唇など、歯以外のどこでも発生する可能性がありますが、中でも多いのは舌にできるがんで、約6割を占めています。年代・性別としては、60代以上の高齢者や男性に発症しやすい傾向があるものの、昨今では女性や若者の患者さんも増えてきています。口腔がんは初期は痛みがないことが多く、これが早期発見を難しくしています。また、たとえ痛みが出るほど進行していたとしても、患者さんがお口にがんができることを知らず、放置して重症化するケースも少なくありません。進行した口腔がんでは、患部を大幅に切除し、組織をからだのほかの場所から移植する必要があります。その後も化学放射線療法や、お口の機能のリハビリが欠かせません。しかし、早期発見できれば切除範囲はわずかですむため、発音や発声に障害は残らずにすむことが多く、再発も少ないのです。一般的にがんの原因は、食事、お酒やタバコなどの生活習慣、ウイルスなどだと言われていますが、口腔がんではさらにお口の粘膜への慢性的な刺激が原因となります。刺激が繰り返されるうち、ある時粘膜の細胞に異常が起き、口内炎から前がん病変、そして口腔がんになるのです。
口内炎がすべて口腔がんになるわけではなく、口内炎がある日突然口腔がんになるわけでもありません。口内炎のうち、細胞の増殖に異常が起きて、ごくまれにがんになる潜在能力を有したものが口腔がんになる可能性があります。くわえて、潜在能力を持った口内炎ががんになるには、必ず前がん病変という状態を経由します。そして口内炎が前がん病変を経てがんになるには、5年以上の長い年月がかかることが通常です。前がん病変も必ずがんになるわけではなく、そのまま状態が変わらないこともあります。前がん病変の顕著なサインは、粘膜の赤と白の変化です。前がん病変が見つかった場合は、定期的に歯医者さんを受診して、経過を見守ることが重要になります。
口腔がんになりやすい場所は、お口の中で慢性的な刺激を受けている場所で、刺激には物理的なものと化学的なものがあります。物理的な刺激とは、歯が傾いていて舌や粘膜にぶつかったりよく噛んでしまう、被せ物や入れ歯が当たるなどです。化学的な刺激とは、食品添加物や人工材料の影響などや、歯周病による慢性的な炎症が関与することもあります。お酒やタバコは粘膜を弱くするため、粘膜が弱るとより刺激が加わりやすい状態になります。
口腔がんは、胃や大腸のがんに比べれば、早期発見が容易ながんです。早期に発見できれば、会話や食事への影響も軽度にとどめられることが多いです。早期発見には、セルフチェックと歯科医院の定期検診がとても大切なので、ぜひ始めて見てください。
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個別ページへ|Posted 2021.4.13|