入れ歯にも歯と同じようにプラークはつくの?
現代の歯科治療は、治療材料や器械などの進化にともない、十数年前と比べると圧倒的に歯を抜く必要が少なくなりました。昔ながらの、「おじいちゃん、おばあちゃんになったら歯を全て失って総入れ歯」という時代は終わりました。
しかし一方ででは、部分入れ歯の装着者の割合は、50歳代で13%、60歳代で27%、70歳代で40%と年齢とともに増えていますし、歯周病の有病率も高齢化しています。
高齢になるほどお口の中で歯周病と部分入れ歯が混在しているわけなのですが、ここで「えっ?なぜ歯周病という“疾患”と、部分入れ歯という“道具”を同じ扱いにするの?」と思われましたか?この2つ、決して無関係ではありません。
キーワードは、「デンチャープラーク(入れ歯のプラーク)」入れ歯にもたくさんの細菌が住んでいて、全身に悪影響を及ぼしかねないのです。
歯周ポケット内のプラークは、嫌気性菌で構成され、空気のあるところでは繁殖できません。しかしデンチャープラークは、通性嫌気性菌やカンジダ菌(カビの一種)で構成され、むしろ少し空気のある環境の方が繁殖しやすく、歯周ポケットにはいない菌が増殖するなど、入れ歯特有の細菌叢を示します。っこうした菌により、時間の経過とともに成熟して病原性が増し、さまざまな疾患をまねく可能性があります。
入れ歯にプラークがたまっていると、入れ歯が細菌のリザーバー(貯蔵庫)となります。すると、入れ歯の床があたる粘膜に口内炎ができたり、入れ歯が隣接する歯や、クラスプ(バネ)がかかる歯に根面のむし歯が生じやすくなります。また、舌炎、口角炎や口腔咽頭カンジダ症だけでなく、細菌が全身へ伝搬して、誤嚥性肺炎や消化器系感染を引き起こしかねません。
このような理由から、ご自分の歯と同じように、入れ歯のプラークコントロールも非常に大切です。部分入れ歯は、床、人工歯、金属のバー、クラスプなど非常に複雑な構造をしています。とくにレジン製の床は、肉眼では見えない細かい穴が空いているため、細菌の格好のすみかとなるほか、床の周りには唾液による自浄作用が働きにくいので、余計にプラークがたまりやすくなります。
入れ歯の床はプラスチックの食器、クラスプは金属のスプーンと似ています。食器は、ご飯を食べたらすぐに洗います。そのままで次の食事に使う人はいないですよね。
入れ歯も同じで、「使ったら洗う」=「デンチャープラークを除去する」ものです。ブラシでみがかず夜寝るときに入れ歯洗浄剤に漬けるだけ、という患者さんもときに見受けられますが、これはNG。できれば毎食後、外して洗ってください。その際は、義歯用ブラシで物理的にプラークを除去することも忘れずに。
なお、入れ歯洗浄剤には入れ歯の材料との相性がありますので、歯科医院でご自分に合ったものを選んでもらいましょう。
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|Posted 2019.5.18|